この記事の読了完了時間は約30分です。
こんにちはmioです。
私も勤務していた放デイで、経営者の不正を発見し内部告発を経験しました。内部告発はとても勇気のいる行動です。
告発者だけでなく、既存の職員・子ども・その保護者などその教室のすべての人に何かしらの影響が出ます。そのため、これらのリスクを踏まえた上で、これから内部告発を考えている勇気ある人の手助けに少しでもなればと思い記事を書きます。
この記事では、放課後等デイサービスの不正を告発する職員が直面するリスクや、職を失った際に利用できる給付制度について詳しく解説します。
内部告発の準備から通報後までの流れ
放課後等デイサービスで内部告発をする流れは下記の通り。
- 不正発覚
- 証拠集め(複数人での告発の場合は人選はしっかり)
- 内容の整理
- 通報先の確認(不正内容によって通報先も変わる)
- 通報(可能であれば実名)
- 事実調査
- 監査(証拠提出先の職員に今後の日程など聞くと良い)
- 指導・是正勧告
- 再調査
- 行政処分・罰則・書類送検(悪質な場合)
放デイの不正を告発するリスクと対応策
放課後等デイサービスの職員が不正行為を告発する際、倫理的には正しい行動であるものの、職を失うリスクを伴います。
不正が発覚した事業所が閉鎖されたり、経営側からの報復行為があったりと、告発によるリスクは無視できません。このような状況で次の職場に影響が出ないよう、できる限りの対策を取ることが重要です。
1. 匿名での告発が可能な窓口の利用
内部告発をする場合は必ず匿名で行いましょう。
各自治体の匿名通報窓口を利用することで、告発者の特定を避けることができます。報復のリスクを減らすためにも、このような窓口を活用するのが安心です。
また、『公益情報保護法』といった通報者を守る法律もあるため、自分で言ってしまわない限りはバレる心配はありません。
ただし、保護されるための条件もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
2. 証拠の保全と相談
事前にしっかりとした証拠を収集し、信頼できる同僚や労働組合に相談しておくと、突然の職失いへの備えとなります。
告発するとなると、基本的には経営者を告発することになります。そして、告発には何よりも『証拠』が必要となります。証拠がなければ、動いてもらえません。
証拠に該当するものは下記の通り。
- 経営者・その関係者からのメールなどの指示文
- ボイスレコーダーの録音
- 不正箇所の証拠写真・録画
メールでの指示文などは後から見返せますが、その場で急に話された場合などは、基本的に証拠を取っている人は少ないです。
対策方法としては、証拠になり得る重要な会話だと思ったら、可能であれば録音を開始しておくこと。基本的にはいきなりの事なので先に御手洗いなど、その場から一旦離れて録音を回した状態で話す。または後からメールなどで「先程の件ですが、〇〇ということでよろしいでしょうか。」と指示があったことを記録として残しておくのも良いでしょう。
3. 証拠を残すためのおすすめ機材
証拠を取る・保存しておくなら、基本的にはお手持ちのスマホで大丈夫です。
私の場合は、普段担当者会議や事業所内での研修などで議事録を取るときに使用している、PLAUD NOTEがあったので、それをボイスレコーダーがわりに使用しています。
普段なら、会議の録音・会議内容の文字起こし・要約をして業務の効率化を図っていますが、PLAUD NOTEがあれば、突然の電話や証拠となり得る急な指示などをボタンひとつで録音・文字起こし・要約まで行ってくれます。
証拠内容のまとめなど、通常業務もしながらだとなかなかまとめる時間が無かったりするので、私が内部告発を行った際にはすごく重宝しました。これ一つあれば業務でも証拠が必要な場面でも使用できるので、今回おすすめさせていただきます。
4.内部告発による子どもや保護者へのリスク
放課後等デイサービス(放デイ)の不正を内部告発する場合、告発者本人だけでなく、利用者である子どもや保護者にも影響が及ぶ可能性があります。以下にリスクをまとめます。
1. サービスの突然の停止
• 施設の閉鎖:不正が発覚した事業所が行政指導や認可取り消しを受け、サービスが突然停止する可能性があります。
• 利用者の混乱:子どもが日常的に通っていた環境がなくなることで、生活リズムや習慣に大きな影響が出ることがあります。
2. 他の施設への移行が難しい
• 代替施設の不足:地域によっては、放デイの数が少なく、新しい施設への受け入れがすぐにはできない場合があります。
• 待機期間の発生:すぐに利用可能な施設が見つからず、保護者が仕事を休む必要が出るなど家庭への負担が増大します。
3. 子どもの心理的影響
• 信頼していた環境の喪失:慣れ親しんだ施設が閉鎖されることで、子どもが不安や混乱を感じることがあります。特に発達障害のある子どもは、環境の変化に敏感で、ストレスが増す可能性があります。
• ケア不足のリスク:移行期間中に十分な療育や支援を受けられなくなることで、発達の機会が制限される場合があります。
4. 保護者への負担増
• 経済的負担:他の施設を利用するための追加費用や、保護者が一時的に仕事を休むことによる収入減が発生することがあります。
• 情報不足の不安:告発が行われた施設の不正内容について十分に説明されない場合、保護者はその情報の真偽や子どもの安全に関して不安を感じることがあります。
5. 新たな施設でのトラブルリスク
• 適切な支援を受けられない可能性:新しい施設が子どもの特性や支援ニーズに合わない場合、支援の質が低下することがあります。
• 他の保護者とのトラブル:新しい施設での入所調整や、受け入れの競争が発生することで保護者同士のトラブルに発展する可能性もあります。
内部告発前に考慮すべきこと
• 子どもや保護者の安全を最優先に考え、告発前に自治体や第三者機関に事前相談を行う。
• 代替施設の候補をリストアップし、通報後の混乱を最小限に抑える準備を進める。
• 地域支援や自治体の補助制度を活用し、移行期間中の家庭の負担を軽減する方法を検討する。
内部告発は重要な行動ですが、子どもや保護者への影響を考慮し、リスクを最小限に抑える準備が不可欠です。
これらを考慮し事前の準備をするために、保護者側の気持ちを知っておく必要があります。あわせて下記の記事もご覧ください。
職を失った際に利用できる給付制度
内部告発により職を失った場合、次の職場を見つけるまでの間の収入を保障する制度を知っておくと安心です。
1. 失業給付金(雇用保険)
告発により職を失った場合、基本的には雇用保険からの失業給付金が受け取れます。支給開始には7日の待機期間があり、自己都合退職の場合よりも早く支給が開始される「特定受給資格者」として認められる可能性があります。これにより、告発者であっても経済的に安定して職探しができるようになっています。
2. 職業訓練給付金
次の職場に向けたスキルアップが必要な場合、職業訓練を受けることで受給資格が得られる給付金です。訓練期間中は雇用保険の給付と合わせて支援を受けられるため、転職活動の間の生活費も安心です。
3. 自治体の緊急サポート制度
自治体によっては、放デイのような社会福祉施設の職員を対象にした緊急の経済支援制度が設けられている場合があります。特に内部告発による解雇のケースでは、住居確保給付金など、居住支援のための制度も利用可能です。お住まいの自治体に確認し、必要な支援を受けましょう。
なぜ放デイで不正が発生しやすいのか
結論から言うと、儲けやすいからです。
放デイは、参入のしやすさ、利益率の良さなどから、他の福祉サービスの中でも儲けやすいビジネス形態となりました。そのため、2012年の開始以来、儲けだけを追求する素人事業者が急増しました。
その背景には、以下の複数の構造的な要因があります。
1. 管理監督体制の不備
放デイは国や自治体からの補助金によって運営されているため、サービス提供にかかる費用が一定の条件を満たしていれば補助金が支給されます。
しかし、全国的に放デイの数が増え続け、自治体の監督業務が追いつかないことから、十分な監査が行き届いていないケースも見られます。
こうした監視の目が行き届きにくい環境は、不正が発生するリスクを高める原因となっています。
2. 経営面での課題
放デイの運営には、専門スタッフの確保や施設の維持管理など、多大なコストがかかります。
しかし、一部の事業所では経営が難航し、利益を確保するために実際には行われていないサービスを報告して補助金を多く受け取る、虚偽報告などの不正行為に手を染めてしまうケースもあります。
このような経済的なプレッシャーも不正の一因とされています。
3. 資格要件やスタッフ確保の難しさ
放デイの運営には、児童指導員や保育士といった専門職の配置が求められていますが、こうした資格を持つ人材は全国的に不足しているのが現状です。
結果として、専門資格を持たないスタッフを「見なし」職員として配置する、あるいは架空の職員を登録することで職員数を水増しし、不正に補助金を受け取る事例が発生しています。
4. 利用者家族にとっての情報不足
保護者にとっても放デイの運営状況や具体的な利用状況は見えにくく、事業所が適正に運営されているかどうかを把握するのが難しいのが実情です。
また、不正が発覚しても保護者に対して十分な説明がなされず、情報が遮断されることもあります。
そのため、不正が明るみに出にくく、事業者側が管理の甘さを利用することが起こりやすい状況です。
5. 収益が利用者数に連動している
放デイの主な収益は、自治体から支給される「介護報酬」に依存しています。
この報酬は、利用者の人数やサービス提供時間に基づいて支給されるため、利用者数が多ければ多いほど報酬が増え、収益が上がる仕組みです。
このため、定員以上の利用者を受け入れたり、実際には提供していないサービス時間を過大に報告するなど、不正を行えば容易に収益が増える構造になっています。
6. 利用者やサービス内容の管理が不透明
放デイでは日々のサービス内容や支援時間を記録し、報告する義務があるものの、現場では監査や確認の手が行き届かず、これを悪用する事業者が現れることがあります。
例えば、支援記録を水増ししてサービス提供時間を長く見せかける、実際に行っていないプログラムを実施したことにするなど、帳簿や記録上で操作が可能なことが利益を増やしやすい要因です。
7. 資格要件の「見なし」規定がある
放デイには、児童指導員や保育士などの資格者を配置する必要がありますが、「見なし」職員として非資格者を配置することが認められる場合があります。
この制度により、人件費を抑えながらも、形式上は適切な職員配置がされているように見せかけることが可能です。
人件費の削減によって利益を上げやすくなるため、最低限の人員配置で利益を得る事業所が現れやすくなっています。
不正の仕組みがもたらす影響と対策の必要性
このような不正が続くことで、誠実に運営する放デイの事業者や、利用者である子どもたちと保護者が不利益を被ることになります。
不正を防ぐためには、自治体による定期的な監査や、保護者が施設の運営状況を確認できる仕組みの整備が不可欠です。さらに、事業所側の自己監査や透明性を高める取り組みも、放デイの健全な運営を保つために重要です。
不正を告発した職員が感じる不安と対策
内部告発は職員にとって「正義の行動」である一方で、精神的な苦痛や社会的なリスクを伴います。このため、告発を決断する際には、専門機関への相談や家族・友人のサポートを得るなど、慎重な準備と心理的ケアが必要です。
職員が感じる不安
1. 正義感と葛藤
• 子どもたちのために行動する使命感と、職場や同僚を裏切ることへの罪悪感に苦しむ。
2. 孤立感と不安
• 職場での人間関係が悪化したり、将来のキャリアに影響が出ることへの不安。
3. 精神的ストレス
• 不眠や体調不良など、告発に伴うプレッシャーから健康に支障をきたす場合がある。
4. プライバシー侵害への恐れ
• 匿名性が守られないリスクや、地域社会での噂にさらされる懸念。
5. 子どもや保護者への影響を懸念
• 施設の閉鎖によって子どもたちの生活が混乱する可能性への罪悪感。
6. 社会的視線への懸念
• 同業界や地域社会で「問題を起こした人」と見なされるリスク。
7. 希望と不安の混在
• 不正が正される達成感と、期待した結果が得られない場合の落胆。
リスク軽減のための対策
1. 事前準備と相談
• 公益通報者保護法に基づき、行政機関や労働組合、弁護士などの専門家に相談する。
• 証拠をしっかりと収集し、通報が「合理的な理由」に基づくことを確認する。
2. 匿名性の確保
• 匿名で通報できる窓口や第三者機関を利用し、自身の特定を防ぐ。
3. 心理的サポートの活用
• 信頼できる家族や友人に相談し、心理的な負担を軽減する。
• メンタルヘルスの専門家やカウンセラーに相談することも検討する。
4. 代替案の準備
• 施設が閉鎖された場合に備え、代替施設や他の支援サービスを保護者に提案する計画を立てる。
5. 自分のキャリアを守る行動
• 通報後のキャリアの選択肢を広げるために、転職エージェントや職業訓練を活用する。
• 告発後の就労支援や失業給付制度についても事前に確認しておく。
6. 慎重な通報先の選定
• 信頼できる内部窓口、行政機関、または専門機関に適切な手順で通報する。特に外部への通報は法的条件が厳しいため注意する。
7. 子どもや保護者への影響の最小化
• 保護者に状況を丁寧に説明し、子どもたちの生活や発達への影響を最小限に抑えるための協力を得る。
次の職場探しに向けた準備と給付制度の活用
内部告発後、職場を失ったり、退職を余儀なくされる場合、次の職場探しに向けた準備や公的給付制度を活用することが重要です。
1. 職場探しの準備
- スキルを見直す:職務経歴書を更新し、資格取得や研修参加でスキルアップを図る。
- 求人情報を集める:ハローワークや転職サイト、業界の人脈を活用する。
- 業界外も視野に:教育機関や福祉施設など、放課後等デイサービス以外の職場も検討。
- 退職理由の準備:前向きな理由を面接で伝える練習をしておく。
2. 給付制度の活用
- 失業手当:ハローワークで手続きし、生活を支える給付を受ける。
- 職業訓練給付金:訓練中に生活費を支援し、資格取得で再就職を有利にする。
- 生活福祉資金貸付制度:一時的な生活費不足を補うための無利子貸付を利用する。
- 自治体の支援:就労支援や子育て家庭向けの補助金を活用する。
内部告発後は生活とキャリアの安定を両立させることが大切です。スキルを磨きつつ、給付制度を活用して生活を安定させ、次の職場探しを計画的に進めましょう。
最後に
この記事は
- 発達障害をお持ちのお子様・その保護者様
- これから医療機関・連携機関の利用をご検討中の方
- 療育について勉強したい方
上記の方々へ向けて、お子様が社会に出るまでの一連の流れを分かりやすいよう、サイトマップにまとめています。